幸福な王子/柘榴の家
童話集第一遍が「幸福な王子」、第二遍が「柘榴の家」で、今回は両方が一冊に纏まっているものを読んだ。幻想文学、というジャンルを(おそらくちゃんと意識しては)初めて読んで、あらゆるものに自我がある独特な世界観に圧倒されつつも楽しく読めたけど、よくよく考えたら「サルカニ合戦」とかも臼が喋ってるのに子供の頃は深く考えないで読んでたよなと思った。童話で花が喋ろうが打ち上げ花火が喋ろうが、読み聞かせてもらう子供にとっては問題ないのかもしれない。
ジャイロスコープ
短編集。あとがき的なインタビューで先生本人も仰ってるけど、読者の考える「伊坂さんらしさ」は若干薄い短編が多め(特に「ギア」とか)。「浜田少年ホントスカ」と「1人には無理がある」が特に好き。
特に「浜田少年ホントスカ」の、
「殺し屋なんていう便利な職業は、フィクションの中にしかいないですからね」
これを読んだ最初は、こういうメタ的に刺してくる台詞を登場人物に言わせるの好きだなー、とだけ思ってたけど、読み返してみるとこれってこっちの台詞に意識を持っていかせることで、少し前の浜田少年の「プロの殺し屋に頼んだ方がいい」という若干違和感のある台詞をかすませてるのがすごい。他にも好きな言い回しは山のようにあったけど、あげるとキリがないので割愛する。
夜の国のクーパー
伊坂さん祭り。
なんとなく、「私」にとってこの国はミニチュアの世界みたいな物なんじゃないかなぁと確たる証拠もなく漠然と考えていたので、まさか本当にそうだとは思わず読み進めていてびっくりした。
冠人に対する印象が文字通り180度ひっくり返ったけれど、「この親にしてこの子あり」という観点で凄まじく納得出来たのがよかった。物語上、一番明確な目的を持って動いていた複眼隊長の目的が、実は冒頭で既に達成されてました、という読み終わった後にわかるあっけなさも好き。殺し屋シリーズのような転がっていく楽しさ、というよりは、じわじわと謎が深まっていく面白さ、という感じだった。
二重人格
めちゃくちゃ難しくて自分の読解力を疑いそうになった。勢いで読み切った後に見た巻末解説に「ドエトスフキーの作品の中でも評価がわかれる」「冗長な書き方が~」的な事が書いてあってちょっと安心した。個人的には、タイトルとあらすじを見て、自分の理想の姿の他人格が内面に生まれて支配されてしまう話かなと思ってたんだけど全然違くて、自分が上手くいかない理由を突然現れた理想の自分が邪魔してくるからだと思い込んで破滅(自滅)するという話でちょっと意外だった。そもそも「二重人格」っていうタイトル自体が、本来はロシア語でのドッペルゲンガー的な単語の意訳らしいと知って納得した。他のドエトフスキー作品を何冊か読んでからまた読み返したい。
「後回し」にしない技術
kindle unlimitedで読んで良かったので再読。ドエトフスキーの小説読んでみようと思ったのもこの本から。「一冊読もう、ではなく一行読もう」とか、「ウォーミングアップに時間をかけるな」とか、後回し癖のある人(私)にとっては切れ味の鋭い言葉が多い。この本とか、「勉強が面白くなる瞬間」はモチベーションダダ下がっている時に読みたい。